【ちょっとした雑学】生命力が強すぎる菊芋歴史

菊芋

 

生命力が強すぎる菊芋歴史

あなたは菊芋がどのような食材かご存知ですか?もしかしたら初めて耳にしたという方もいらっしゃるかもしれません。
近年では健康食材として注目を集めている菊芋も、長い歴史があり私たち日本人の食生活とも大きく関わっていたのです。このページではこれから菊芋の歴史をふまえて、菊芋がいったいどのような食材なのかについてお伝えしていきます。

菊芋は芋ではない

菊芋の漢字を見るとあたかも芋であるかのように思えますが、実はそうではありません。菊芋はキク科ヒマワリ属の植物で、芋とは全く別の植物なのです。漢字を見れば芋のように思え、実物を見ると生姜と似ているため、生姜かと勘違いをしてしまうややこしい食材ですね。
菊芋という名前がついた理由は菊のような花を咲かせ、根本は芋のように見えるため菊芋と呼ばれるようになったと言われています。

 

菊芋の起源

菊芋は北アメリカが原産地とされ、今のカナダからニューヨークあたりにかけて生息していたと考えられています。もともとはネイティブアメリカンであるトピナンブ族が食料として食べていました。

菊芋の花1600年代になると北米に訪れたヨーロッパ人によって菊芋が持ち帰られ、最初は家畜の作物として利用されていました。そして栽培作物としてヨーロッパ全土で利用されるように。生命力が非常に強く、栽培も手がかからないことから食糧難のときには一般的な食事として重宝されていたそうです。また、栄養価の高さは当時から注目されており、ハーブとして人々の健康を支えていたと言われています。
また、ヨーロッパにおいて菊芋は「カナダポテト」「エルサレムアンティチョーク」といった俗称で呼ばれることもあり、「エルサレムアンティチョーク」のエルサレムはイスラエルの首都と同じつづりですが、全く関係がないそうです。

菊芋が日本に入ったきっかけ

そんなヨーロッパで親しまれていた菊芋がとうとう日本に入ってくる日が来ました。菊芋が日本に入ってきたのは幕末から明治初期あたりと言われ、ちょうどペリー来航時に伝わったとの説が一般的です。日本に入ってからはヨーロッパと同じように最初は家畜の飼料として使われており、その後、伊藤圭介博士が研究を進め、田中芳男によって菊芋と命名されました。なお、伊藤圭介は花粉、雄しべ、雌しべの言葉を最初に作った人物であり、田中芳男は菊芋を命名した他にもソメイヨシノを発見した人物として歴史に名を残しています。日本有数の学者が菊芋に注目したのは生命力の高さと栄養価の高さにあったのかもしれません。その後、日本でも菊芋の栽培が進み一般家庭でも親しまれるようになりました。

菊芋は戦時中に大活躍

菊芋はヨーロッパ人だけでなく、多くの日本人の生活を支えてきました。特に第二次世界大戦時には繁殖力の強さから人々の日々の食事に採り入れられ、食料が十分に確保できない時の代用食として大活躍することに。サツマイモやジャガイモと同じく戦時中の日本人の食生活には欠かせない食材でした。しかし、菊芋はサツマイモやジャガイモと比べてでんぷん質が少なく、食べた時の甘みや満足感が少ないのです。そのため、人々はジャガイモやサツマイモの方を好んで食べ、菊芋はどうしても食糧が少ない冬場の保存食にされたり、漬物として食べられたと言われています。 確かに味はいまいちかもしれませんが、強靭な生命力を持つ菊芋は戦後も大活躍すると思いきや…。そうはいきませんでした。

やはり味があまりよくないため、戦後日本が豊かになってくると次第に他の食材が利用されるようになります。菊芋は実際に芋ではありませんが、同じ芋としてひとくくりにされるサツマイモやジャガイモが当たり前に手に入るようになると、当然のことなのかもしれません。
そして次第に人々から忘れ去られ、繁殖力が強く野生化してしまう菊芋が増えたため、国の指定外来種にされてしまいました。

菊芋の今

ヨーロッパや北米で親しまれた菊芋も今ではあまり食べられなくなってしまいました。菊芋の存在感が薄くなってきたのは長年愛されてきた欧米諸国だけでなく、日本でも同じです。しかし、近年菊芋が再び注目を集める日がやってきました。
それは菊芋の味がおいしいからではなく、健康のために食べる人が増えてきたからです。
菊芋はテレビや雑誌で紹介されるほどの人気ぶりで、食後血糖値の上昇が気になる人からはとても注目されています。
近年になって菊芋に含まれる食物繊維が健康によいことがわかり、インターネットでも菊芋を使った料理に関する情報も目にするようになってきました。しかし、注目を集めてもまだまだ一般的ではなく、スーパーに行っても目にする機会はまずありません。やはり他の野菜と人気をくらべると劣ってしまうからなのかもしれません。
そのため、最近ではサプリメントで菊芋をとる人が増えてきています。いくら生命力が強くて栽培が簡単だからといって自分自身で菊芋を栽培するのは骨が折れるものです。しかも菊芋は年中収穫できる作物ではなく、冬の間にしか収穫ができません。なので、サプリメントの形にしたほうが年中菊芋を摂取することができ、忙しい現代人にはあっていると言えます。

ただ、最近は菊芋が再び少しずつ人気を取り戻してきているため、菊芋を栽培する農家や地域が増えてきています。
日本国内では岐阜県の恵那市岩村町で菊芋の漬物が販売されており、長野県や熊本県では菊芋を活用して地域振興をしようという動きも見られます。

また、菊芋は日本だけではなくヨーロッパでも再度注目を集めており、ドイツ・フランス・アメリカなどの国々では菊芋の研究が進められているのです。ドイツでは菊芋への注目度が高まり、菊芋の栽培に力を入れた結果、品質の高いドイツ産菊芋として幅広く認知されるようになりました。

昔はヨーロッパや北米、日本などに住む数多くの人を飢餓から救ってきた菊芋が、今度は食べ過ぎによって健康を害している人々を救う様子を見ていると、味は悪くてもとても貴重な食材だとわかります。
数百年にわたり人々の役に立ってきた菊芋はまた新しい形となり現代人の生活を支えていくのかもしれません。